2022-10-05
いままでの記事の中でも触れてきたように、データサイエンスはまだまだこれから活用が進んでいく領域です。
サイエンスという名がつくように、まさに、日々試行錯誤が繰り広げられ実用されるべく日進月歩で進化し続けていく領域となります。
昨今になって、実際にデータの活用を行う企業が増えて来ていますが、まだまだ日本全体で活用が盛んとは言い難い状態です。
そのような中で、実際にその日進月歩で活用のための試行錯誤が繰り広げられる現場を見ることで、今後どのような発展が見込まれていくのか、予測を立てることが出来るとも言えます。
今回は、企業のデータ活用の前進として、多数のデータサイエンティスト達と共同でデータ活用を進めるプロジェクトを推進するKaggleと呼ばれるプラットフォームと、その取組について焦点を当てていきます。
Kaggleとは、データサイエンティスト達が、自分たちのデータ分析力を磨く場として機能しているプラットフォームとなります。
kaggleとはカグルと読み、kaggleに参加し、スキルを磨く方々をカグラーと呼びます。
the home of Data Science & Machine Learning
と表記されるように、データサイエンスと機械学習の家と呼ばれ、世界中の、機械学習・データサイエンスに携わる約40万人が集まるコミュニティです。
Kaggleの中では、企業や政府などの組織と、データ分析のプロであるデータサイエンティストや機械学習エンジニアを繋げるプラットフォームとして機能しており単純にエンジニアと企業をマッチングするのではなく、コンペも行われ盛り上がりをみせています。
企業や政府などの組織とのコンペとは、企業や組織が競争形式で課題を提示し、賞金と引き換えに制度の高い分析モデルを買い取るという仕組みです。
開催されるコンペは多種多様で、
・住宅価格の予測を行うために、間取りや、駅からの距離等といった複数の要因から、戸建て住宅の最終的な価格を予測する。
・有事の際のTwitterの投稿の有用性に目を付け、災害の発生状況を正しく測定するために、tweetの内容と状況から、自動で災害に関するリアルタイムの情報を収集するアルゴリズムを作る。
・飛行機内のパイロットの状況をリアルタイムで観察し、危険な状態になった場合自動でアラートをあげるアルゴリズムを作成する。
といったコンペが行われています。
このように、実際に企業がどのようにデータ分析を利活用しているのかという一端が垣間見える為、ある意味で業界でのデータ活用の前線の取組みがわかるといえるでしょう。
今回はそのようなKaggleのコンペの中から、住宅メーカー業界に関する内容を取り挙げ、現在の住宅メーカー業界でのデータ活用はどのようなものかという内容と共にご紹介をしていきます。
住宅メーカー業界でのデータ活用の取組みを説明する前に、住宅メーカー業界がどのようなもか、業界の全体像について説明をしていきます。
まずは、住宅メーカー業界の業界規模を確認していきましょう。
業界の市場規模は、約13兆円となっており、2013年から2019年にかけて右肩上がりで増加の傾向を辿っておりました。
ところが、2020年以降は売上の減少に転じており、2020年度の新設住宅着工戸数は前年比8.1%減の812,164戸となりました。
背景としては、人口の減少による戸建て需要の減少や、リーマンショックに次ぐ、新型コロナウイルスによる景気の低迷、また、2015年の相続税の法改正による賃貸ブーム等が要因として考えられています。
上記のように、住宅メーカーの現状は国内市場において低迷の傾向があり、厳しい状況下にあるということが想像できますね。
ところが、厳しい状況下にありながらも新しい需要も生まれており、例えば、シェアハウス需要の増加やリモートワークによる戸建て住宅需要の増加が挙げられます。
シェアハウスに関しては、複数名で同じ物件に住むことで都内の物件の利便性という恩恵を受けながらも、家賃負担を人数で分担することが出来るというメリットから需要の増加がみられています。
また、リモートワーク需要に関しては、新型コロナウイルスによってリモートワーク、テレワークが一般的に普及したことで、無理に都内に物件を借りる必要はなく、郊外の比較的住宅価格が抑えられる場所で一軒家を購入してしまおう。という背景から需要が生まれております。
加えて、異業種による住宅メーカーの買収も行われており、トヨタ自動車を親会社に持つ「トヨタホーム」や、パナソニックやヤマダ電機が住宅メーカーを完全子会社化するなど、住宅業界に他業種が参入するケースもみられます。
また、大手の住宅メーカーもゼネコンとの資本提携を活発化させ、商業施設と住宅地が一体化した施設の開発を行うなど業界再編も進んでいます。
加えて、他の住宅メーカー各社も国内市場の縮小に合わせ、海外展開を視野に入れており、主に米国、欧州、東南アジア等、先進国のみならず、新興国にも進出し、戸建てはもちろんのこと、マンションやビル、賃貸事業、都市開発など幅広く事業の展開を模索している状態です。
そのような状況かの住宅メーカー市場は、先行き明るいとは言い難く、また2020年の段階で、日本における住宅数が総世帯数を上回っている状況からもわかるように、国内人口減少による、段階的な住宅市場の縮小がほぼ確定している状況となります。
一方で、世界的にみると人口の増加がみられるため、海外市場を見据えた事業展開や、国内においても、少数ではありながら戸建ての需要は確かに存在するため、特定の対象にターゲットを絞ったニッチ戦略が取られていくことが想定されています。
上記のトレンドからもわかるように、業界的に市場の縮小がおこっているため、国内で事業の展開を進める住宅メーカーにとっては、年々少なくなっていく住宅購入希望者の奪い合いが行われている状態です。
したがって、いかにして、購入希望者のニーズを満たし、確実に顧客層を獲得していけるか、ということが重要となります。
例えば、国土交通省などの外部機関が提供しているデータに加え、積極的に自社でデータを集め、どの物件がどのタイミングでどのように売れていったのかのデータを蓄積していき、住宅不動産需要が一目でわかるシステムを構築します。
さらに、自社の売上の改善にとどまらず、システム自体を新サービスとしてリリースし、新たなビジネスモデルを構築したハウスメーカーや、自動車業界と同様に、他業界と連携し、住生活上での活動を定量化し、集まったビッグデータを活用することでより快適な住生活や、コストの削減を叶えるスマートハウス構想等、様々な形でのデータ活用を行うことができます。
それぞれ目的は「新しい消費者ニーズの発見」と「住生活の効率化、質の向上」といったように異なりますが、膨大なデータから新しい活路を見出す動きが活発に行われていることは間違いありません。
上記のような活用事例がみられる住宅メーカー業界ですが、kaggle上でも、住宅メーカーに関してのコンペが開催されておりますので、今回はそちらをご紹介いたします。
海外の事例となりますが、アイオワ州エイムズにあるほぼすべての住宅の特徴を説明する約79もの変数を元に、回帰分析を用いて、住宅の価格を予想するモデルを構築するというコンペとなります。
例えば、駅からの距離、築年数、住宅の色や、天井の高さまでといった様々な要因と住宅価格との関係性を分析し、どのような要素を満たすことで、どれくらいの住宅価格が期待されるのかといったことをシミュレーションすることが可能となります。
正確に住宅価格を予想することができると、戸建てを購入する際には、予算に合わせて自身の理想とする住宅を購入することができるため、高い顧客満足度に繋げることが出来ますし、また賃貸として使用する際も、購入価格と賃貸の価格を比べることで、どの程度の価格設定であれば戸建て住宅と比較して賃貸の金銭的なメリットを感じてもらえるのかを示しやすくすることが出来る為、大いに事業の発展に役立つと考えられるでしょう。
上記のように、購入希望者にとっても、またハウスメーカー側にとっても、具体的に金額を算出できることで新しい購買機会を創出することが出来たりと双方にとってメリットを生むことが出来る余地のあるコンペであるといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。
このようにKaggleのコンペの内容を見ることで、発行元の会社の業界内での戦略や置かれている状況について、大枠の様子が見えてきます。
次回以降もKaggleのコンペを中心に多種多様な業界の取組の紹介や業界でのデータ活用の様子をご紹介していきますので、どうぞお楽しみに。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回の記事でまたお会いしましょう。